安心して被曝してください。
今週は雪だるまマークの日が続きます。
今朝はこのあたりでも粉雪が舞ったりしたのですが、積もるようなことはありません。
外にいると、鼻の頭と指先が冷たくなる程度です。
「原発の闇を暴く」 広瀬隆・明石昇二郎 集英社新書
を読みました。
断片的な知識はたくさん持っていても、
言ってもわからない人に、わかるように説明するのは結構やっかいです。
そんな時、この本は原発好き嫌いの叙情的な話じゃなくて、
何がウソで、誰が意図的にデマをとばしたり、悪事にたずさわっているのか、
そのことが明快に述べられているから、いいですね。
まるで、「安心して被曝してください」といっているようだ、
というのは、文科省が、「放射能を正しく理解するために」と称して、WEBで公開
している文書です。
その中には、「避難指示が出ていなければ、そこで暮らせるということです。」とか、
「水道水や市場で流通している食品は、安全基準を満たしています。」とか、
堂々と断言してあります。
また、「放射能について過剰に心配しない、させないことが大切です。」ときて、
「不確かな情報や、人の噂などの風評に惑わされず、学校から正しい知識と情報
をもらって、毎日、明るく、楽しく、仲良く、安心した生活を送ることが心身の病気を
防ぐ一番よい方法です。」と。
さらに、「 放射線の影響そのものよりも、「放射線を受けた」という不安を抱き続ける
心理的ストレスの影響の方が大きいと言われています」とくれば、これはまいった。
もう返す言葉がありません。
まさに、たっぷり放射能をあびて、楽しくやってください、ということですよね。
著者は、今回の原発震災は、「リスクと利権を天秤にかけて後者を選択した
「原子力関係者」たちの所業が招いた「人災」である」と表現しています。
平和ボケしてお金に飼い慣らされてきた愚かな大人たちは、自業自得だとして、
今後の未来を生きていく子供たちに及ぶ害だけは、可能な限り少なくしてあげ
なくちゃ、どう考えても申し訳ないと思うのです。
その文科省の文書には、
「チェルノブイリ原発事故では、小児甲状腺がん以外のがんの増加は認められて
いません。」とあり、その小児甲状腺がんも、「チェルノブイリ原発事故の後16年間で、
18歳以下の子について2,010名もの方が甲状腺がんになったことがわかりました。」
とありますが、著者によると、実態はそんな生易しいものじゃありません。
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事故から20年後の2006年6月3日時点では、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ三国の
健康被害者は合計700万人を数えたのです。2009年4月26日には、ウクライナ全国
で犠牲者の追悼式典がおこなわれ、ウクライナだけで公式に事故の被害を受けたと
された人が230万人に上がり、事故当時に子供や若者だった4400人もの人が、放射
性ヨウ素の被曝による甲状腺ガンの手術を受けていることが分かりました。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシと比較にならないほど人口密度の高い日本で、これか
ら何が起こるか、日本人に分かっているのだろうか。
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で、私たちに何ができるんだろうということで、
著者は、「これから連中のつく嘘と詭弁を、目を見開いてしっかりと監視しながら、
自分の身を守ってゆく必要があります。」といいます。
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政府は復興税だ、消費税だと言って増税をたくらみ、東電は東電で、電気料金値上げ
で福島事故の補償金や賠償金を国民に払わせようとしている。
お人好しの国民は「東北が少しでも早く復興するのなら仕方がない」と、増税も電気料
金値上げもやむなしという声が多数を占めているらしいが、それは言語道断で、許さ
れることではない。
被害者である国民が、加害者である東電が支払うべきカネを支払う道理など、金輪際
あってはならない。法治国家で、こんなことは絶対許してはならない。
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増税や電気料金値上げを絶対許さないというメッセージを、ここで国民が強く打ち出さ
なければ元の木阿弥になる。
なぜそれを強く言うかといえば、電力自由化が始まった現在も電力会社の地域独占が
まかり通っているのは、天下り官僚、とりわけ経済産業省の役人が電力会社の飼い犬
になっているからです。その結果、電力会社が送電線の利権を握って高額の送電線
利用料をほかの産業に押しつけ、独立系発電事業者(IPP)の自由な売電を阻止して
結局、被害を受けているのが日本の企業と国民だからです。
接待や天下りは、ただの金銭上の問題ではなく、国民生活に直接、多大な被害を与え
るから深刻なのです。彼らは国民をだますためには何でもやります。エネルギー問題
を真剣に考えるなら、社会悪である独占利権を擁護してはいけない。
国民は叙情的にならず、将来の子供たちのことを考えて、目の前にある物事の本質を
しっかりと見なければいけません。
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「原発が稼働しないと電気がなくなるぞ」と国民を脅して誘導するプロパガンダの大ウソ
についても、ここではきちんと説明されています。
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日本の発電施設の設備容量(発電能力)と最大電力の推移を示したグラフ。
棒グラフは、火力、水力、原子力を毎年合計したもので、そこに走っている
折れ線グラフがその年の最大電力、つまり、1年で最も暑い時期、真昼の午
後2~3時頃に記録される電力消費のピークです。
真夏の短いピーク時でさえ、棒グラフの一番上の原子力がなくても、火力と
水力で発電能力は充分に間に合っている。
しかも過去最高の電力消費のピークは2001年7月24日に記録した1億
8269万キロワットで、それ以後10年間、一度もこれを超えていない。
つまり、原発がなくても電力需要にはまったく影響がない。
皆、電力会社のネガティブ・キャンペーンに乗せられてきたわけです。
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わが国は、大量の発電能力を持った天然ガス火力の発電所を抱えながら、
その稼働率を5~6割に意図的におさえてきたのです。天然ガス火力とは、
最もクリーンで、すべての先進国で現在の発電のエース設備なのです。
その上、東電や中電などの電力会社だけが電力を供給していると思ってい
る人が多いですが、じつは従来の電力会社以外にも電力を供給できる企業
がたくさんあるのですよね。今回も震災と福島の原発事故による電力不足
を受けて、素材メーカーや大手商社など、卸電力事業を手がけるIPPが、供
給力の引き上げに動いています。
原発の発電能力が約5000万キロワット。それに対して、自家発電能力は、
2010年9月で6000万キロワットを超えている。したがって、IPPの発動機を
稼働させれば、原発なんて1基もいらないことは数字で証明されている。
最近、よく新聞に原発反対の意見が載っているけれど、そういう人たちが
必ず発する文句に、「いますぐ原発を止めることは無理だろうけれど」という
おかしな言い回しがあって、私はこの人間たちの無知に腹が立ってしょう
がない。
要するに、原発に反対する人も、マスメディアも、電力事情を何も知らずに
議論したつもりになっている。
では、なぜあり余るIPPの電気をわれわれが利用できないのか。
卸電力が開放されれば、電力会社は自分の顧客を失うことになる。何を考
えたかというと、送電線の利権を握って、高額の送電線使用料を請求して、
ほかのすぐれた発電業者を排除してきたのです。
発電と送電の事業を分離し、電力自由化が進み、卸電力業者が電力市場
に新規参入すれば、自由競争ですから電気料金は当然安くなります。
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何よりも重要なのは、日本に原発はまったく必要ない、即時すべて廃炉に
できるという認識を日本人が持つことです。
次の大地震の到来を考えれば、一刻の猶予もありません。次の原発震災
から助かるために急いで求められているのは、国民一人ひとりの意識改革
なのです。
エネルギー論であわてる必要はどこにもない。まず原発を止めて日本人全
体が生き残ってから、みなさん落ち着いてじっくり議論しなさい、ということ
です。
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まったく冗談じゃない。
みんないい加減目を覚まして、ラジオ体操でも始めなきゃね。
元気で、生きているうちが花ですから。