為山塾の夏
もう4年目になるのかなぁ。
毎年夏になると、いくつかの保育園さんが宅野にやってくる。
小津辺の浜は、内湾になっていて遠浅だし、あまり大きな波も来ない。
ゴロゴロの石場には、貝やヤドカリがたくさんいる。
透明な水だから、もぐれば小魚の群れが見えるし、時にはタコが歩いていたりする。
こんな海で思いっきり遊んだことは、
きっと大人になっても楽しい思い出となって残っていく。
都会の近郊には、もう海と呼べるような海なんかなくなってしまったけれど、
ここにはまだたくさんの生き物が生きていける海がある。
お腹がすいて戻ってきたら、待ってましたの「そうめん流し」。
そのために毎年、山から太い竹を切ってくる。
竹というのは、だいたいまっすぐに空高く伸びているというイメージがあるけれど、
実際には、まっすぐな竹なんてほとんどないのです。
だからそうめん流しの樋を作るのも、結構たいへんだったりします。
曲がったのを切ったり、いい具合の深さにしたり、角やささくれを丸めたり。
でも、
そうめんを流して喜ぶ子どもたちの声があれば、苦労の甲斐もあるというもの。
そうめんだけじゃなく、トマトを流したり、きゅうりや、タコを流してみたり。
太陽の下でみんなで食べる食事はとびきり楽しい。
食事のあとに、大きな古民家「為山塾(いさんじゅく)」で過ごす昼下がりも格別。
天井が高くて、風がよく通るから、
建物の中はほんとに涼しくて、まるで別世界。
何といっても午後のお昼寝が最高です。
昔ながらのかまどで炊いたごはんのおいしさも、
涼しい縁側に坐って、セミの鳴く庭を見ながら食べた記憶と共に、
きっと子どもたちの心にしっかり残っていくと思う。
広い土間と、それを見下ろすように鎮座する巨大な鳳凰。
このホウオウが子どもたちには大人気。
築130年の古民家は、子どもたちにとっては不思議の国。
以前、海遊びに来たことのあるお兄ちゃんが、
今度は弟にそのホウオウのことを話して聞かせているんですね。
夜、みんなが寝静まった頃に、ホウオウが大きな羽を広げて飛び回るという伝説が、
兄弟の間ですっかり言い伝えになっています。
お昼寝からさめたら、スイカ割り。
子どもたちには真っ赤なスイカがよく似合う。
そうこうするうちに日も暮れて。
海に沈む夕日に、ピーナッツのような韓島も、やがてシルエットになって。
こうして過ごした為山塾での夏の記憶は、
今年もまたたくさんの子どもたちの胸の中で楽しい思い出となる。
「また、来たい!」といって、
今度はお父さんとお母さんを連れて、
先頭に立って道案内してやってくる子がいる。
うれしいね。
明日の世界を支える子どもたちのために、
おしつける教育じゃなくて、自分のことを棚に上げたお説教じゃなくて、
大人がしてあげられることって、たぶんそんなに多くない。
きれいな海と自然、奇跡的に残された大きな古民家。
何か作られたものにお金を出して興じるのじゃなく、
ただそこにあるものを、あるがままに体験できることが、本当に幸せなんだと思う。
来年もまた、こういう機会が作ってあげられることを、心から願います。
コメント
お世話なさる方は大変でしょうけど、子供たちに元気を貰って頑張ってください。
Posted by: とってもいいな~ | 2010年8月 7日 20:02
ありがとう。
それまで30年簡も空き家になってた古民家なので、子どもたちのはしゃぐ声に、家も喜んでいるのがわかります。
Posted by: Caferoman | 2010年8月 7日 20:24