枇杷の実がなる頃

そうだ、もう黄色くなった枇杷の実や、まだ青いのまで、
枝にはたくさんぶらさがってた。
そんなことだから、たぶん6月の中頃やもしれない。
梅雨にはまだ少し早いからといって、
乾いた土の上には、真夏のような陽射しが強く強く降り注いでいました。
でも、その日に限ってはめずらしく、宅野は朝からあいにくの曇り空でした。
こんな日は夕日も沈まない。
お昼も過ぎて、
もう今日、君は来ないかもしれないと思ってた。
そんな日の昼下がりに、海からの贈り物が届いた。
それは紐解くと夢のように甘く、
赤子の想い出のようにおだやかな磁場をそこに形成したのでした。
そうして、ただいつものように海を眺めている間に、
そいつは心のはるか深奥に小さな渦巻きを忍ばせていました。
やがて日も暮れ、
思いがけぬ夕焼けに、ヨシが小さな感嘆の声をあげる頃には、
果たして渦は、もう手がつけられないほど大きく大きく成長していました。

こんなにも早く、何とも簡単に落ちる太陽があるのでしょう。
それからというもの、
この世界は優先順位というものがまるでひっくり返ってしまったかのようです。
これが枇杷の実がなる頃の不思議な邂逅の顛末です。


